ゴルディアスの蕺

「また会ったね」

朝に満足出来なくて、夜の街を宛もなく彷徨い始めたのはもういつからだったっけ。思い出せない程、いつの間にか毎日に満足出来なくなっていた。
いつも通り、いつものコンビニにいつもの時間に、悩んで結局いつもと同じ珈琲に手を伸ばす。でも今日はいつもとは違った。隣で見つめる君の存在に出会った。

「いつもその珈琲買ってるよね。この時間、君によく会うから。よかったら散歩でもしよう」

満足のいくまで夜を君と過ごして、いつしか満足出来なかったはずの毎日が満たされていっていた。

現実のゴルディアスの結び目は解けやしないけど、年齢も職業も知らない君とちっぽけな夜の逃避行は些か救われたような気分に錯覚させる