マクスウェルの百合

「見た事も無い天使なんか崇拝して無いで、目の前にいる私を崇拝したらどうですか」

天使様のご加護により、災害からは守られて、農作物は豊かに育つ、自然豊かな街・カルタゴ。
そしてこのカルタゴの端にひっそりと聳え立つ協会、ノーブルクロイツでは今日も天使様へのお祈りが捧げられていた。

そして、今日もまた1人。シスターが天使様の生贄になった。

この協会には女しかいない。幼い頃に少女にのみ、ノーブルクロイツから招待状が届き、親元を離れてこの協会で崇拝という名の洗脳教育を受けるのだ。天使様の生贄になる事が、一生涯に一番の喜びだと謳わせて。

財宝や天の恵みを街人にやる代わりに、若い女を欲する低俗な化け物を故人らは”天使様”と呼びいつしか崇拝するようになった。一方、そんな天使の存在の裏に悪魔も存在していた。若い女を攫い、天使様はお怒りになり、財宝も天の恵みも寄越さなくなったという授業は何度も何度も何度も聞かされていていた。

明日は私が生贄になる日。本当は生贄になんてなりたくない。誰か、そう、悪魔でもいい、ここから攫って助け出してくれたなら。天使様のステンドグラスに背を向けて祈る私の前に現れたのは悪魔だった。